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あらすじ
新宿シアタートップスのあらすじ

演劇ユニット「デニスホッパーズ」新宿シアタートップス
「デニスホッパーズの公演は中止だ!!」ネタ元はネットへの書き込みだった。『天空旅団』の星川光という役者が、実は『デニスホッパーズ』の主宰・柏木幸太郎だという情報を見つけてしまったことから、両公演へのダブルブッキングが発覚。当然のようにデニスホッパーズの役者たちは怒って帰ってしまった。すでにセットがバラされてガランとした舞台上で、柏木は静かに「公演はやる!」と言い、紀伊國屋ホールへと向かう。天空旅団の新人女優・柴と花屋の安藤を連れて急いで帰って来た柏木。それを追ってきた上谷。そこに天空旅団のベテラン男優たちが乗り込んで来て、柏木を非難し始める。柏木とデニスホッパーズを立ち上げ、公私共に支えてきた主演女優の豊原が、「天空旅団の公演を降りるなら、役者たちを連れ戻す」と条件を出す。柏木の下す決断とは…そして花屋の安藤が現れて…
紀伊國屋ホールのあらすじ

劇団「天空旅団」紀伊國屋ホール
結成22年目の老舗劇団『天空旅団』。主宰の雨宮が3年前に他界してから観客動員数が伸び悩んでいる。雨宮を慕っていた看板男優・藤崎も劇団を去った。雨宮の死後、何度も繰り返されてきた追悼公演も今回が最後。そこに一人の若者がオーディションに合格した。星川光。星川は劇団『デニスホッパーズ』の主宰・柏木幸太郎と同一人物だった。同日同時刻、紀伊國屋ホールと新宿シアタートップスで公演が重なっている。ダブルブッキングを承知で公演に参加していることを知ったデニス・ホッパーズの役者たちはゲネプロをボイコット。柏木は天空旅団の若手に出演を依頼する。雨宮イズムに心酔する天空旅団のベテラン男優たちは「芝居をナメるな!」と激怒する。しかし柏木は、憧れの紀伊國屋ホールの舞台に立ちたかった。そしてどちらの公演も成功させたかった。そんな強気な柏木のもとに花屋の安藤が現れて…
【ユニットと劇団】
(文責:堤泰之)
演劇ユニット「デニスホッパーズ」
1990年代、小劇場界に大きな変革の波が訪れました。その内容について簡単に整理しておきます。
- 劇団の崩壊とユニットの誕生…固定メンバーで半永久的に活動を行う「劇団」に対して、「ユニット」は基本的に一公演限りの付き合い。人間関係のわずらわしさから解放され、新しい出会いによって受ける刺激を優先させた「ユニット」だが、集団で表現を熟成させるという意味ではマイナス面も。
- 大きな声で喋らない…長らく常識とされていた、腹式呼吸をベースとした発声法の消滅、あるいは軽視。これには、「日常を描くリアルな芝居」と言われる作風が増えたことが影響している。
- 三谷幸喜の商業的な成功…これはものすごい事件でした。バイトに明け暮れて貧乏は当たり前と思ってた若者達が、芝居で飯が食えるかもしれないと思い始めたのですから。
- 親や友達に理解してもらえる…わかりやすくて笑えて泣けてという作品が主流になったことで、チケットが売りやすくなった。そして役者は「河原乞食」ではなく、「夢を持って生きる若者」として社会的に認められるようになった。
2000年以降、これらの流れはさらに加速しています。極めて健康的だと思います。まっとうな道を歩んでいるのかもしれません。しかしなんだかまっとうすぎて、つまらないような、悔しいような、複雑な気分の今日この頃です。
劇団「天空旅団」
1980年代、私が学生の頃は「天空旅団」のような劇団がいっぱいありました。
今の若い人にはイメージしづらいかもしれないので、その特徴を挙げておきます。
- 舞台設定は時空を超えている…台本のト書きの一行目には、「どこでもない場所」とか、「核戦争によって滅びた世界」などと書かれていたりする。
- 登場人物が多国籍…例えば吉原の花魁「お松」と、ローマの貴族「トッティ」と、「忠犬ハチ公」が並んで記されていたりする。
- 基本的に前を向いて喋る…観客にセリフをぶつけろとか、声を当てるんだ、などと演出に言われる。
- テンションの高さを競い合う…舞台上でいかに狂えるかが、いい役者の証なのだと、技術のない先輩に言われ続ける。
- 役者のほぼ全員、稽古中に声が枯れる…言葉の意味じゃなく熱を伝えるんだなどと演出に言われた結果、喉をしめた無理な発声をしてしまう。
- スローモーションの多用…大仰な音楽とスモークと照明によって、演劇やってる感を盛り上げる。オープニングやエンディングでは鉄板の演出。
- カーテンコールで何故か役者が客席を睨みつける…意図はよくわからない。
- 親や友達に理解してもらえない…河原乞食だから当然である。
まだまだ挙げればきりがないのですが、今思えばあり得ないことだらけです。
馬鹿にして笑い飛ばすのは簡単なのですが、なんだか寂しいような、もったいないような、複雑な気分の今日この頃です。