STORY
17年前の2008年、演劇ユニット「デニスホッパーズ」の主宰者柏木幸太郎は新宿の二つの劇場に同時に出演することを企てた。新宿シアタートップスで行われる自分たちの公演と、同じ日時に紀伊國屋ホールで行われるアングラ劇団「天空旅団」の公演の両方に出演しようと試みた。秘密裏に行おうとした柏木の企ては本番前に両方の劇団にバレてしまい失敗に終わった・・
そして現代、17年後の2025年、「デニスホッパーズ」も「天空旅団」も消滅。新たにダブルブッキングを企てた男がいた。男の名は藤崎竜一。藤崎は元天空旅団の役者で、テレビや映画で活躍していたのだが人気に翳りが見え始めていた。このままではいけないと自ら作・演出・主演・主宰として『藤雨』-Fujisame-という劇団を起ち上げた。メンバーである同じ事務所の興梠浩正、岬エリカ、一之瀬るみ、河合静代を従え、新宿シアタートップスで公演を打とうとした。その時藤崎の頭に浮かんだのは17年前のダブルブッキングのことだった。『藤雨』と同時期に紀伊國屋ホールで公演を行う団体を調べると、それは偶然にもなんと旧知の仲である菊島永輝がリーダーの演劇ユニット『ジャッカル』-Jackal-だった。
『ジャッカル』は菊島永輝、松丸優、日下部浩介、秦邦和の4人で結成された人気ユニット。早速、藤崎は菊島に役者が両劇場を往き来しながら作品を成り立たせるダブルブッキング公演を提案。スタッフも含め喧々諤々となるが、話題にもなるだろうと、最終的には『ジャッカル』と『藤雨』によるダブルブッキングを上演することに。
公演初日当日。開演2時間前。両劇場で最後の通し稽古が行われている。役者は必死で移動しながら両作品を成り立たせようとするが間に合わない場面が続出、芝居が止まり大騒ぎとなる。『ジャッカル』と『藤雨』のキャスト・スタッフが入り乱れての言い争いも起きる中、元天空旅団の座長代理、チャーリー若松が現れる。
役者たちの熱い思いとスタッフたちの仕事に対する情熱、それぞれの演劇人たちがぶつかり合い、劇場に渦巻く芝居熱は時間を追うごとにヒートアップしていく。開場まであと数分。果たしてダブルブッキングは成功するのか・・