「5 years after」は、リーディングのために書いた作品です。通常の舞台用の脚本を読み合わせてみようということではなく、リーディングならではの面白さを追い求めて試行錯誤した結果、なかなか一筋縄ではいかないリーディングドラマが出来上がりました。 出演者は三人。三部構成で、それぞれが主人公・水川啓人を演じます。どういうことかというと、第一部では20歳の啓人を役者Aが、第二部では25歳の啓人を役者Bが、第三部では30歳の啓人を役者Cが演じます。昨日の自分と今日の自分は違う、そして明日の自分も違うんだというメッセージが込められているような、いないような・・1人の人間を3人の役者が演じる。これはもう一筋縄ではいかない、二筋縄、いや三筋縄の作品なのです。 リーディングの面白さの一つに、1人の役者が複数の役を演じやすいことがあると思います。通常の舞台の場合、着替えたりメイクを変えたりしなければならないのですが、リーディングだと声色を変えるだけで成立します。 「5 years after」では、主人公を演じていない役者は別の役を演じます。 その数はざっと60役。つまり1人の役者が20役を演じ分けなければなりません。しかもステージ毎に役が変わるので、公演を通して役者は1人で60役を演じることになります。これはもう大変です。三筋縄どころじゃありません。六十筋縄です。 リーディングが面白くなるかどうかは、役者がその難しさをどれだけ理解しているかにかかっています。セリフを覚えなくていいとか、動きも無いから楽だとか、そういう甘い考えで臨むと痛い目に会います。動かずに読んでいるだけだからこそ、難しいのです。お客様を物語の世界に引き込み、想像力を高めて貰うためには、高い技術と集中力が役者に求められます。少なくとも百筋縄くらいの強度が必要です。 ということで、なんと百六三筋縄のリーディングドラマが出来上がりました。最後までごゆっくりお楽しみ下さい。
3人の出演者がそれぞれ20役を演じ分ける、計約60人の登場人物によるリーディングドラマ。 主人公・水川啓人が様々な出来事を経験しながら年齢を重ねて行くストーリーの中の、特に前半部分に自分の実際の人生を照らし合わせて、少々恥ずかしく、甘酸っぱくも懐かしく、遠い目をしながら届いた台本を読み、非常に没入した覚えがあります。 リーディングドラマは役者の方々が最も得意とし、特に舞台では最も重要且つ、それぞれの最大のセールスポイントと思われる「動き」を封印しなくてはいけないという事で、大変だろうなと思う反面、物語自体が言わんとしている内容が、よりダイレクトに伝わる利点もあるのではないだろうかと思います。 舞台音楽を作る時は、全体の雰囲気を理解してもらいやすいような謂わば壁紙的な曲や、あるシーンでの感情をブーストするような楽曲、または状況が大きく変化した時にはっきりとそれを提示するタイプの曲等々を演出家の求めに応じて付けて行くわけですが、リーディングドラマの場合、ストーリーの内容は劇的に変化したとしても、舞台の様子は視覚的にほとんど、というか全く変化していないという恐ろしい状況下にあります。 しかしながらこの場合、お客様は自身の想像力の深部に達しているはずで、非常にデリケートな心の状態であると推察出来ます。 今回プロデューサーの指示でもあった、「アコースティックギター」というのは音色やその個体も非常にデリケートな楽器で、ひとつ音を出してもすぐに消え行ってしまうものです。 消えては出し、消えては出しを繰り返す過程の中にこそ、何か大切なものがあるのかもしれないというのは、自身も思うところであり、水川啓人をいつの間にか応援している理由でもあるかもしれないと思います。
この作品は水川啓人の20歳、25歳、30歳を描きます。 学生生活から社会人デビュー、そこから起きる人生のあれこれ。 啓人の20歳からの5 years afterはひょんなことで人生が展開していきます。 我々演劇界の中で20~30代を過ごす俳優陣にも様々な人生があります。 うまくいっていると思っている者、うまくいっていないと思っている者、他人からはうまくいっていないと思われながら自分ではうまくいっていると思っている者、他人からはうまくいっていると思われながら自分ではうまくいっていないと思っている者。 誰と出会うか、何に影響されて何が起きるのか。 その時その時に向き合うしかありません。 本当にその時の判断は正しかったのかというのはきっとあとから20代を振り返って思うことなのでしょう。 なので、悩んでいても仕方がなく、その時の自分のセンスを信じて立ち向かうしかありません。 毎回、朗読劇(60分)と反省会(30分)を行い、この90分で一つの作品です。 水川啓人を演じたキャストがその生きざまを通して感じたこと、60役の人生を垣間見て思ったこと、そして自分の人生をどう思っているのか。 水川啓人⇔各キャスト。 そこが毎回の見どころでもあります。 役者自らが自分の魅力を好き勝手に表現して、各役者自身の生きざまを通して水川啓人を感じていただければと思います。 堤さんの脚本は刺さるセリフがたくさんあります。 笑っていただき、泣いていただき、お客様お一人お一人への心のプレゼントになれば幸いです。
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スタッフコメント
作・演出 堤 泰之
「5 years after」は、リーディングのために書いた作品です。通常の舞台用の脚本を読み合わせてみようということではなく、リーディングならではの面白さを追い求めて試行錯誤した結果、なかなか一筋縄ではいかないリーディングドラマが出来上がりました。
出演者は三人。三部構成で、それぞれが主人公・水川啓人を演じます。どういうことかというと、第一部では20歳の啓人を役者Aが、第二部では25歳の啓人を役者Bが、第三部では30歳の啓人を役者Cが演じます。昨日の自分と今日の自分は違う、そして明日の自分も違うんだというメッセージが込められているような、いないような・・1人の人間を3人の役者が演じる。これはもう一筋縄ではいかない、二筋縄、いや三筋縄の作品なのです。
リーディングの面白さの一つに、1人の役者が複数の役を演じやすいことがあると思います。通常の舞台の場合、着替えたりメイクを変えたりしなければならないのですが、リーディングだと声色を変えるだけで成立します。
「5 years after」では、主人公を演じていない役者は別の役を演じます。
その数はざっと60役。つまり1人の役者が20役を演じ分けなければなりません。しかもステージ毎に役が変わるので、公演を通して役者は1人で60役を演じることになります。これはもう大変です。三筋縄どころじゃありません。六十筋縄です。
リーディングが面白くなるかどうかは、役者がその難しさをどれだけ理解しているかにかかっています。セリフを覚えなくていいとか、動きも無いから楽だとか、そういう甘い考えで臨むと痛い目に会います。動かずに読んでいるだけだからこそ、難しいのです。お客様を物語の世界に引き込み、想像力を高めて貰うためには、高い技術と集中力が役者に求められます。少なくとも百筋縄くらいの強度が必要です。
ということで、なんと百六三筋縄のリーディングドラマが出来上がりました。最後までごゆっくりお楽しみ下さい。
音楽 細川圭一
3人の出演者がそれぞれ20役を演じ分ける、計約60人の登場人物によるリーディングドラマ。
主人公・水川啓人が様々な出来事を経験しながら年齢を重ねて行くストーリーの中の、特に前半部分に自分の実際の人生を照らし合わせて、少々恥ずかしく、甘酸っぱくも懐かしく、遠い目をしながら届いた台本を読み、非常に没入した覚えがあります。
リーディングドラマは役者の方々が最も得意とし、特に舞台では最も重要且つ、それぞれの最大のセールスポイントと思われる「動き」を封印しなくてはいけないという事で、大変だろうなと思う反面、物語自体が言わんとしている内容が、よりダイレクトに伝わる利点もあるのではないだろうかと思います。
舞台音楽を作る時は、全体の雰囲気を理解してもらいやすいような謂わば壁紙的な曲や、あるシーンでの感情をブーストするような楽曲、または状況が大きく変化した時にはっきりとそれを提示するタイプの曲等々を演出家の求めに応じて付けて行くわけですが、リーディングドラマの場合、ストーリーの内容は劇的に変化したとしても、舞台の様子は視覚的にほとんど、というか全く変化していないという恐ろしい状況下にあります。
しかしながらこの場合、お客様は自身の想像力の深部に達しているはずで、非常にデリケートな心の状態であると推察出来ます。
今回プロデューサーの指示でもあった、「アコースティックギター」というのは音色やその個体も非常にデリケートな楽器で、ひとつ音を出してもすぐに消え行ってしまうものです。
消えては出し、消えては出しを繰り返す過程の中にこそ、何か大切なものがあるのかもしれないというのは、自身も思うところであり、水川啓人をいつの間にか応援している理由でもあるかもしれないと思います。
プロデューサー 難波利幸
この作品は水川啓人の20歳、25歳、30歳を描きます。
学生生活から社会人デビュー、そこから起きる人生のあれこれ。
啓人の20歳からの5 years afterはひょんなことで人生が展開していきます。
我々演劇界の中で20~30代を過ごす俳優陣にも様々な人生があります。
うまくいっていると思っている者、うまくいっていないと思っている者、他人からはうまくいっていないと思われながら自分ではうまくいっていると思っている者、他人からはうまくいっていると思われながら自分ではうまくいっていないと思っている者。
誰と出会うか、何に影響されて何が起きるのか。
その時その時に向き合うしかありません。
本当にその時の判断は正しかったのかというのはきっとあとから20代を振り返って思うことなのでしょう。
なので、悩んでいても仕方がなく、その時の自分のセンスを信じて立ち向かうしかありません。
毎回、朗読劇(60分)と反省会(30分)を行い、この90分で一つの作品です。
水川啓人を演じたキャストがその生きざまを通して感じたこと、60役の人生を垣間見て思ったこと、そして自分の人生をどう思っているのか。
水川啓人⇔各キャスト。
そこが毎回の見どころでもあります。
役者自らが自分の魅力を好き勝手に表現して、各役者自身の生きざまを通して水川啓人を感じていただければと思います。
堤さんの脚本は刺さるセリフがたくさんあります。
笑っていただき、泣いていただき、お客様お一人お一人への心のプレゼントになれば幸いです。